
闇の中、肩を寄せ合いランプの光に照らされ静かに学問する二人。
「学堂」という油彩画だ。
机上には積み上げられた本。一人は紙にペンを走らせ、
一人は紙を指差す。
古典的な写実画は、あたかもヨーロッパの巨匠の宗教画のよう。
だが登場人物はリアルな現代の青年たちだ。
鉛筆の芯の鉛や古書の使い古された質感。
人指し指の爪半月まで描く緻密さ。
その眼を見張る技術と構成力に感心し、
老練な画家のものかと思いきや、大学に入って油彩を始め、
ようやく3年という学生画家、飛島達也(21)によるものだった。
博多区下呉服町の町家、高橋家住宅で
立石オメガ泰三(26)のキューレーションによって
「飛島達也 新写実展」は2月中旬から末日まで開催された。
町家に漆色の絵画がしっくり溶け込んでいた。
高校時代、漫画を書いていたという飛島は
勧められて見たカラヴァッジョ(バロック期のイタリア人画家)に影響を受け、
画家に転身したカラヴァッジェスキ(カラヴァッジョ派)。
自画像、静物画、群像画と、カラヴァッジョのパロディを描いてきた。
そのテーマは「学堂」であれば
IT学習批判のように若者らしい時代への懐疑といったもの。
飛島が尊敬するカラヴァッジョには喧嘩や乱闘に明け暮れ、
挙げ句に人を殺したという暗黒面があり、
グロテスクな断首の絵などもある。
だが飛島には夜の絵ばかりを描きながらも真っ直ぐな初々しさがあり、
暗さを感じさせない。
そこが飛島らしさで、この先の変化も見ていたい。