2007年02月10日

田辺聖子の『今昔物語』

前回の「純情きらり」に続いて見ているNHKの朝の連続テレビ小説「芋たこなんきん」。
藤山直美と國村隼の息の合った演技がすばらしい。
このドラマの中の藤原直美はかわいいです。
田辺聖子の自伝的ドラマということで、
これまで一度も読んだことがなかった田辺聖子の小説を読んでみようと書店へ行きました。
そこで選んでみたのが『田辺聖子の今昔物語』

●『田辺聖子の今昔物語』
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『今昔物語』の中から田辺聖子が選んで現代語に置き換えた29話を収録。
おかげで12世紀ごろに書かれたらしい『今昔物語』に浸りました。
『今昔物語』は全31巻あります(8巻18巻21巻は失われているということ)。
インド、中国、日本(本朝)の三部に分かれている短編集です。
この本は田辺聖子が愛する本朝世俗編から選ばれています。
中には中世のさまざまな階層の人々が登場しますが、実に生命力にあふれているのです。

『鬼とお后』は物怪のために生気をなくした帝の后の加持祈祷に呼ばれた上人が、その美しい后に恋をします。

清浄な修行に勤しんでいた上人の心は煩悩に苦しみ、
ついに后の御帳台の内に押し入ってしまいます。
たちまち捕らえられ牢屋に入れられますが、
「死んで鬼になって思いを遂げる」と恐ろしいことを言うものだから、后の父親の大臣が怯え、帝に願って上人を牢から出して修行していた山に返します。
しかし上人は恋しさあまって食を断ち、死んで本当に鬼となり、激しい嵐の日に現れます。

見上げるばかりに大きく、漆のように黒い肌、頭はざんばら髪で角が生え、牙があり、赤い褌に槌を腰に差したその姿。

「恋慕に肝魂が砕け、火のように胸が焦がれて鬼になったのじゃ」という上人。
周りの者はあまりの恐ろしさに腰が抜けますが、
何としたことかお后はにっこりして御帳台の内に鬼と共に入ります。

「一目で恋に落ちてしまって、どんなにお慕いしていたことか」と語る鬼。
「いつかはあなたのような方が現れると待っていたの。
なんて美しい姿なの」と答える后。
鬼が去ったあと后はぼうっとします。

それから毎日のように逢瀬を重ねる二人。
怖れを抱いた帝たちは僧たちに祈祷をさせ鬼を祓います。
平常心に戻った后に帝は「よかったよかった。御帳台の内は誰も見ていたわけじゃない。誰にも知られないよう口をつぐんで隠していればいい」(寛容な帝ですね)と言います。

と、そこへ再び現れ「隠し事ではないぞよ」と踊り上がる鬼。
哄笑して鬼と抱擁する后。
帝も大臣も女房たちも、かぐや姫を迎えにきた天人の軍勢に目がくらんだように身動きできず、ただ二人の様子を見つめます。

語り手の女房は「なんてみだらな」と驚きつつ、「なんて楽しそう」、ついには「なんて美しい」と心を変化させます。

思いを遂げた鬼はその後現れず、后は再び物怪に取り憑かれたということです。

こんな妖しい中世のお話が入ってます。
鬼や物怪が闊歩する想像力に満ちた平安時代って面白くて、興味がつきません。
posted by 理乃 at 12:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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