
わたしはこの書店で絵本を選ぶ時間がとっても好き。
機会を得てプレゼント用の絵本を選びました。
ソファに座って、ちゃんと初めから最後まで読みます。
『ボタ山であそんだころ』は良質の絵本。

筑豊に炭鉱があったころ、ボタ山の近くに住む小学生が主人公です。
石炭のにおいがしてくるように、炭鉱とともにあった暮らしが目の前に広がります。
そこに暮らす子どもたちが実に生き生きと描かれています。
それは作者が実際に体験したことだから。
自分より貧しい家庭の子どもをなんとなく差別する子どもの社会。
学校で使う定規すら買ってもらえない炭住の子ども。
でも子どもたちは元気に遊びます。
そして炭鉱につきものの事故が起きて、
親をなくした子どもはどこかへ行ってしまいます。
暗いストーリーのはずなのに、読後に清涼感が残るのは
作者がかつての時代を愛しているから。
そして厳しい生活の中でも、たくましく生きる子どものちからを信じているから。
与えられた運命はどうしようもない。
今ある生活を愛し、その中で懸命に生きていく人々。
この絵本は大人にも勇気を与えます。
失われゆく炭鉱の記憶。
かつて日本にあり、そして今でも変わらない貧しき者の暮らし。
大切な一冊です。
さて、追加情報です。
『あっぷっぷ』では毎年恒例となった昔話研究家、小澤俊夫さんの講演会が開かれます。
言わずとしれた小澤征爾のお兄さんで、オザケンのパパ。
その温かい人柄に接するのを毎年楽しみにしています。