2016年07月29日

元日赤看護婦によるフィリピン従軍記『佛桑花(ぶっそうげ)』

80代半ばの叔母から連絡があった。
どうしても紹介したい本があると。
友だちの95歳の元看護婦さんが自らの戦争体験を記した本を出版したという。
どんな本か分からないので福岡市中心部に住む叔母のところに本を受け取りに行った。
それがこの本。佛桑花とはハイビスカスのこと。

IMG_20160728_0001.jpg

男性の戦記ものは数あれど、女性、しかも従軍した日赤看護婦の体験記はなかなかないのではないだろうか。
しかも作者は高齢。
どうしても世に残しておきたいという気迫が感じられる。
またそれをサポートしたいという叔母の熱意も。

昭和19年、第三一八日赤福岡班としてフィリピンへ派遣された入江ヨシ子さん。
ダウ兵站病院勤務を命じられる。
しかし病棟は赤十字の印をつけながら攻撃される。
裸足で山道を敗走する日々。
ゴキブリすら食すような状態の中、死んだ患者の肉が切り取られているのを発見する。
着るものも、靴もなく、仲間の看護婦たちはすべて生理が止まる。
唯一生理があった作者は血液を垂れ流しながら行軍した。
たどり着いた川に身を投げ込むと真っ赤な波紋が広がった。
25歳で捕虜となり、戦後一年経って佐世保に引き揚げた。
実家に戻るとそこは焼けていた。
近くに移り住んだ両親と号泣して再会する。
全身虱だらけのからだから虱を洗い流すのを
母親が手伝ってくれる間、涙を流し続けた。
帰国しても幻覚に悩まされ熟睡できず、
夜中に「助けて」と大声を出した。
近くの寺のお坊さんに
戦地で救えなかった傷病兵に申しわけなかったという気持ちを伝えることで
落ち着きを取り戻していった。
緊張の糸がとれたあとはマラリアに罹る。
やがて精神も肉体も回復し、福岡逓信病院に勤務。
婦長、看護部長として職務を全うする。

戦後70年、当時の記憶が風化し、ふたたびきな臭くなる時代。
戦争の悲惨さと悲しみを伝えるためにこの本を上梓した。
posted by 理乃 at 12:59| Comment(2) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
突然のコメントすみません。
この、佛桑花という本…
とても興味深く読んでみたいなと思い
あちこち探したのですが見つからず。。。

販売はされていないのでしょうか??
Posted by 海田 at 2017年08月30日 14:05
海田さま
コメントに気づくのが遅れて申しわけありません。
佛桑花は自費出版ですので、販売はされていません。
直接、ご本人に連絡する以外ありません。
まだご興味がおありでしたら、本人は高齢ですので、
その友人を通してコンタクトを取ることはできると思います。
ご希望の場合は、メルアドまでご連絡ください。
Posted by 理乃 at 2017年09月19日 16:49
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