2016年08月11日

「泣くな道真 大宰府の詩」澤田瞳子

泣くな道真 大宰府の詩 (集英社文庫) -
泣くな道真 大宰府の詩 (集英社文庫) -

持病がかんばしくなく、遅くまで起きられなかった朝。
おかげで読了した「泣くな道真」。
このタイトルのため、ど〜よ〜?と思って読み始めたこの本。
大宰府に到着した道真公のヒステリックな怒りぶりに、
どうなることやら?と思って読み進めるほどに面白さを増し、最後は一気読み!
面白かった〜!

まずあの想像することが難しかった大宰府政庁の中が生き生きと描かれていること。
ふがいない役人(保積)を主要登場人物にしつらえながら、
大宰府に来て変わっていく道真と共に、前向きに変化してくこと。
少弐の妹の恬子が、実は小野小町で
 美しく艶っぽい女人でありながら、
色事にふけるどころか、ちゃきちゃき奔走し、
大団円の暁には別天地に一人で旅立っていく潔さ。
異国の商人が跋扈する博多の町。。。

道真が大宰府に左遷されたときの大弐(だいに:事実上の長官)は
小野葛絃(くずお:46歳)。
その片腕の少弐は小野葛根(28歳)で葛絃の甥。
二人を追って都から来た小野恬子(しずこ 25歳)は
女手が必要な政庁の台所などを采配している。
役所で居眠りばかりしてやる気のなさナンバーワンの少典、
龍野保積(ほずみ)が、あろうことか府の南館に謫居する道真公の慰め役に抜擢される。
迷子になった隈麿(道真公が都から連れてきた二人の子どもの一人 5歳 もう一人の紅姫は7歳)を
送り届けたことから南館に出入りすることになった恬子。
部屋に閉じこもる道真公に対する恬子の進言で
博多に出向いたところ唐物商橘花斎(きっかさい)で
偽名菅三道(かんさんどう)を用い目利きとして働くことになる。
そんな日々、名品、張僧繇(ちょうそうよう)の
阿弥陀如来を明瓊寺の泰成が買っていったことを知り、
道真公は追いかけていく。
そこでその時代の矛盾を集約したような
死を間近に迎え打ち捨てられた老人がその仏画の前に横たえられているのを見る。
そして泰成にかつて道真公が書いた「寒早十首」を、
貧者の苦しさの一端を見ただけですべてを分かった気でいると批判される。
ここで泰成が言う言葉に打たれた。

「貧者を救うのは、官でも御仏でもない、人だ」

真の貧しさ、弱者を知り、
それを救おうとする市井の僧によって道真公は変わるのだ。
やがて政庁で第帳司豊原清友による横領が発覚し、
大弐を傷つけまいと画策する葛絃に道真公は妙案を提案する。
それは希代の詩作者、名筆家であった道真公にしかできない技!
小説ならではの痛快さだ。。。

大宰府は鄙の地などではない。
万葉の時代から文学が花開いた地。
異国の人々が行き交う地。
この地で詩作にのみ励んだ現実の道真公。
清廉なその生活の中で、陰謀渦巻く都にはもう帰りたくなかった。
だからこそ遺体は京へやらないでくれと願われたのではなかろうか、
とますますその念を強くする。
つまり都よりこの地を愛されたのだ。
猛暑の夏のお友にお勧めの一冊です。
posted by 理乃 at 15:36| Comment(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: