沖縄人と沖縄にかかわった人のインタビュー集だが、
この本から立ち上がってきたのは三木さんその人の仕事の歴史でもあった。
いろんな人に刺激を受け、助けも受け新聞記者となったこと。
そして沖縄を愛し、しぶとく生き、
研究にその身を捧げた人々などを真摯に追い続けたこと。
この本を通して三木さんという人の生き方に感銘を受けた。
筑豊の記録作家、上野英信が沖縄とかかわりを持っていたことも初めて知った。
上野は身寄りのない西表炭坑の坑夫を私財をはたいて筑豊に呼び寄せたのだという。
三味線という芸能で身を立てた山入端(やまのは)つるの人生は壮絶だった。
明治39年に屋部村で男三人、女三人兄弟の末っ子として生まれたつる。
長兄はメキシコへ炭坑移民、次男、三男は出稼ぎへ。
女三人は花街へ身売りされた。
それから三味線を習い、身を立てて東京で飲み屋を経営する。
この底知れない貧しさ。けれどこの本に書かれた人々は逞しい。
人はどんなに貧しくても、どんなに苛酷な環境に置かれても、
生きていかねばならない。
置かれた環境の中で闘っていくこと。それしかない。
ニューカレドニアのニッケル鉱山へ移民として海を渡った坑夫たちも
貧困が背景にあったのだろう。
この本の中の逞しい人々に触れて、勇気づけられる。
人は人と繋がっていく。
わたしは三木さんとのご縁で位置からして皆目検討がつかなかった
沖縄本島と八重山諸島への距離が少しだけ縮まった。
感謝したい。

沖縄ひと紀行 (沖縄人物叢書) -