
天平の女帝 孝謙称徳: 皇王の遺し文 (新潮文庫)
孝謙天皇は聖武天皇と光明皇后の娘。
二度も皇位についた。
一度目が孝謙天皇で二度目が称徳天皇。
孝謙称徳天皇というと、
これまで男性作家のものでしか読んだことがなかった。
女性作家だと、
一人の人間として政治をやり遂げようと苦心惨憺する姿が描かれる。
男女差別をせず、
能力のある者がふさわしい職につくべきと言ったとされる。
玄ムや藤原仲麻呂や道鏡とねんごろだったというイメージは
あとになって歴史が塗り替えられたということになっている。
「女に天皇は務まらない」と言われつつも、
平和な世を築こうとした。
唐に憧れ遣唐使を派遣し、藤原仲麻呂の内乱を鎮め、
吉備真備や道鏡をそばに置き、隼人の子どもを育て玉座を譲ろうとした。
宮廷に仕えた隼人を初めて物語で読んだ。
隼人は天皇の行く道の前に立って、
魔を祓うために吠声(はいせい)を発した。そんな習慣は初めて聞いた。
藤原氏によって歴史を改竄されたであろう女帝の真の姿を、
そばで仕えた和気広虫たち女官たちが亡きあとに振り返るという設定で描かれる。
孝謙天皇は、鑑真が来日した折、聖武天皇と共に受戒をを受けている。
女官の由利は吉備真備の娘だ。
女性の視点から、
宮廷という女性が意思を持って生きるには難しい世界を描いた歴史小説。
現代も女性排除は何も変わってない。
これからもっとフェミニズムの意識のある作家の歴史小説が
読みたいと思わせてくれた一冊。