2016年04月20日

『街道をゆくL壱岐・対馬の道』司馬遼太郎

街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 (朝日文庫) -
街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 (朝日文庫) -

春休みに壱岐の古墳を見に行ったあと、この本を読んでみました。
今まで壱岐対馬と一緒くたにとらえていた二つの島が
まったく対照的な島であることが分かりました。
でも二つの島とも古代世界では大陸と日本との中継点として、
なくてはならない島でした。

そもそも古事記にも登場します。国生みの話の中で。
“・・・次に伊伎島を生みき・・・次に津島を生みき・・・”

『魏志倭人伝』に登場する対馬は次のよう。

“はじめて一海を渡る千余里。対馬国に至る
・・・居る所、絶島。・・・土地は山険しく、森林多く、
道路は禽鹿の径のごとし。千余戸あり。
良田なく、海物を食って自活し、船に乗りて南北にい市てきす”

それに比べて長崎県で二番目に広い平野を持つのが壱岐。

対馬の方は良田がないため、室町時代は倭寇となって朝鮮沿岸の米倉を狙って荒らしました。

壱岐で亡くなった人の中で
雪連宅満(ゆきのむらじやかまろ)という人が印象に残りました。
雪連宅満は天平8(736)年、聖武天皇の命で派遣された遣新羅使の一員でしたが、
辿り着く前に天然痘で亡くなったのでした。
雪連宅満の先祖は壱岐出身の占い師。
雪連宅満は海上で亀の甲を焼いて吉凶を占う卜部として乗船したのです。

この本で興味深かったのは“日本の神道が決して日本列島固有のものではなかった・・・”
というくだり。

“骨ト(こつぼく)をやっていた遊牧民たちが、
草原で羊を追いつつ信仰していたのは、天であった。”
“殷人が夷狄くさいのは、王みずからが天を祭り、
天の意志を知るために王みずからが神主の長となって亀トをおこなった”
“縄文時代、多分に南方的な言語と信仰をもっていた日本列島居住民のなかに
対馬・壱岐を北方から串刺しにしてやってくるのは、
この天の思想である。日本の古神道に天つ神があらわれるのは、
右の要素をのぞいて考えられない”
“天つ神は日本の国土に土着した国つ神とは異なり、
観念性のつよい存在といっていい。
「高天原」を祖地とするこの一群の特異な神々は、
『古事記』『日本書紀』によって
天孫降臨の直系という天皇家の祖神群として独占されているのである。
ところが日本中で対馬だけが異例で、
天つ神たちが土着神として島内にいくらでもーーごろごろと祀られているのは
どういうことであろう”

壱岐までは二度行きました。
でもその先の対馬は未だ未踏の地。
行ってみたい島です。
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2016年04月08日

フリーダ・カーロ〜引き裂かれた自画像:堀尾真紀子(中公文庫)

フリーダ・カーロ―引き裂かれた自画像 (中公文庫) -
フリーダ・カーロ―引き裂かれた自画像 (中公文庫) -

フリーダの生々しく、ときには目を背けたくなる絵を初めて見たのは
いつのことだっただろう。
映画『フリーダ』(Frida)を見たのも2003年のこと。
本を読んで映画を思い出すと改めてこの映画はよく出来ていたと思う。
1907年に生まれ1954年に亡くなるまで、
この女性はなんと自分を生きた女性だったのだろう。
幼児期の小児麻痺、少女期の交通事故。
人生を変えてしまうこの不幸がなければ、
彼女が描いた絵は生み出されなかったにちがいない。
思いきり個を描いた絵画が普遍性を帯びて、
いまもわたしたちに突き刺さってくる。
夫であるディエゴ・リベラ、そして亡命してきたトロツキー、
イサム・ノグチと、錚々たる男たちを虜にしたその魅力。
それでも彼女の心は乾いていた。
最後まで愛を求め続けた。
満たされない心が生み出した数々の絵画。
そしてこの本を読んで、
彼女自身は愛を惜しみなく与えた人であることが分かった。
文部省絵画彫刻学校の彼女の生徒たちが涙して語る
彼女への場面にそれが滲みだす。
「貧しい人々への共感と、自分たちの国メキシコへの愛を教わった」
革命に揺れたメキシコに咲いた花。
フリーダの人生にとらわれ、
地球の反対側まで取材に行った堀尾真紀子さんの熱意と行動力のおかげで、
わたしたちはフリーダの人生にいつでも触れることができる。

※久々にフリーダの本を手に取ったのは北に住む友だちの影響でした。
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2016年02月23日

『昔話からのメッセージ ろばの子』小澤俊夫著

ろばの子―昔話からのメッセージ -
ろばの子―昔話からのメッセージ -

1月20日に「あっぷっぷ」であった小澤俊夫先生の講演会で買った本です。
この本は子育てのメッセージがいっぱい。
ラインを引いた箇所をmemoします。
・わらしべ長者:「子どもにはそれぞれ成長のときがある。その『とき』」はみんなそれぞれ違う」
「子どもを育てるとき、他の子との比較は一番してはいけないこと。その子の幸せをほんとうに考えるならば、親や先生など、大人がすべきことは他との比較ではなくて、どの段階にいるのかを見極めること」「持っているものと合致するものと出合ったとき。次の段階へ有効に進んでいく」
・白雪姫:「人間は廻り道する存在。若者は間違えてもいい」
・兄弟の山梨とり:「昔話が小さい者、弱い者のことを繰り返し繰り返し語るということは社会全体がそれらを優しい目で見守ってやっていたことを示す」
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2016年01月26日

東山彰良『流』

さて、家籠もりせざるを得ない状況となって
読了できた『流(りゅう)』。

流 -
流 -

一言。面白かった!
ミステリーとバイオレンスと現代中国史。
プロローグとエピローグは中国の激動期に惨殺事件が起こった寒村。
最初のプロローグに何のこと?と思われたものが、
最後のエピローグにぐーっと収斂されていく手腕に身震いします。
本編はほとんど台湾が舞台です。
台湾で生まれ育った主人公の青春が描かれます。
順調に育っていたのに、ヤクザな友だちのために軌道をハズレていく主人公。
ヤクザな高校に入り、問題を起こして軍隊に入隊。
幼な馴染みの恋人は体を交えることもなく破局。
まっとうとなり貿易関係の職につき、
新しい恋人と出会うが。。。
うねるような躍動感にあふれた物語。
大陸の抗日戦、そして共産党と国民党との内戦。
主人公の祖父はそんな時代をがむしゃらに暴力的に生き抜き、
台湾へ逃げる。
そして20年もあと、蒋介石が死んた直後に浴槽の中で殺される。
その死の謎を解明するのが主人公。
誰が祖父を殺したのか。
祖父に溺愛されて育った主人公は、長い年月その犯人を追い求める。
まだ台湾から中国に渡れなかった時代、
日本を経由して偽のパスポートで入国し、
祖父の故郷、自らのルーツの国で犯人を見つける。
ときどき怪異な現象も起こる。
窮地に陥ったとき現れる狐火。。。
青春の嵐が吹き荒れる。
無力さにもがき、のたうち、自棄的になり、
それでも前に進んでいく。
傷つきながら、自らをけなしながらも、
涙を流しながらも、
熱い血潮は枯れることはない。
第二次世界大戦直後の中国、そして台湾に触れることができる
小説。
おすすめです。
ラベル:東山
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2015年02月11日

「日本美 縄文の系譜」宗左近

忙しくて本を読む時間が作れないという中で、
やっと読み上げた本。「日本美 縄文の系譜」。

IMG_20150211_0001.jpg

わたしは縄文土器がとても好きで、
そこに潜む弥生土器とは全く異なる精神に惹かれてきた。
弥生時代を築いた人々に滅ぼされた縄文の人々。
でも、その精神は完全に滅ぼされたわけではなく、
どこかで脈々と流れている。
縄文土器や土偶が語る、あの自然への畏怖のストレートな感情。
それを今も感じるときがある。
世界のどこにもない、縄文土器の独創性。
炎のように見える土器の縁の不思議。
大自然を神とし、階級も戦いもない世界に住んでいた縄文人たち。
まるで宇宙人のような顔をした遮光土器をこの本はこう説明している。
「縄文の土偶は男性が抱いたときに見る、仰向いた女性…はっきり鼻の穴をあらわにして…。待たれている男性は誰なのか。人間の男性ではない。神という名の男性なのである」
少し遮光土器のあの不思議な表情の謎が解けたような気がした。
博物館の一室で見るたび、ほかとまったく異質な存在感を放って、
わたしの目を釘付けにしてきた縄文土器。
縄文土器があると、そこだけ光を放っているようなのだ。
縄文土器を、そしてそれを生み出した人々のことを、もっと知りたいと思う。
この本に続いて読むべき本が、もうすぐわたしの元に届く。
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2013年02月10日

『センセイの鞄』読了

漫画『センセイの鞄』を読み終えた。

距離を取っていたセンセイと主人公の女性が
間を取りながらも近づいていく。
気が合う人、ウマが合う人、
違和感のない人、
そういう人と巡り会えることは少ない。
だから巡り会った奇跡を大切にしたい、
そんなことをしみじみ思わせてくれる。
こんな地味な大人の漫画が海外で読まれていることがうれしい。

センセイの鞄   2

で、どんなふうに読まれているか…。
漫画は海外では日本スタイルで右からというのも多くなってきているけど、
この漫画は昔スタイルで左からスタイルに反転されているみたいなのだ。

http://noromo.blog117.fc2.com/blog-entry-53.html
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センセイの鞄

ニューカレドニアで日本語をちょっと教えたフレッドからメールが来て、
この漫画を読んだと言う。
まったく知らない漫画。
それでネットで中古を取り寄せ読んでいる。
これがいい…。
とてもいい…。
地味なんだけど、高齢のセンセイと元教え子の40歳を前にした女性の
かかわりあう話なんだけど、
センセイと彼女の距離がとてもいい。
いつも二人は居酒屋で飲んで食べてる。ときには一人で、ときには二人で。
それがとってもおいしそうに食べるんだ。
食べることが好きな人たちは、わたしも大好き。
彼らはそれぞれ孤独なんだけど、
悲壮感を漂わせているわけではなく、たんたんと生きている。
なんとなくうまが合う。この二人の関係はそう。
それは人間にとってとってもすてきなこと。
本では気質が合うって言い方をしていたと思うけど。
そばにいて、何も話さなくても通じ合える関係。
そんな関係に人生で人はどれほど巡り会うのだろう。
でも、巡り会えればとてもすてき。
そしてそんな関係をいつまでも大事にしようって思わせてくれる本…。
まだ読んでる途中なんだけど、しみじみ…
しみじみいい…。
こんなわたしの感想はとてもフランス語でフレッドに伝えられないな…。
残念だけど、ありがとう。ニューカレの友だち。

センセイの鞄 1 (アクションコミックス) [コミック] / 川上 弘美 (著); 谷口 ジロー (イラスト); 双葉社 (刊)
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2011年11月20日

『鹿男あをによし』

鹿男あをによし|万城目学|幻冬舎|送料無料

テレビドラマで見た方もあると思うけど(わたしは見てなかった)、
『鹿男あをによし』の原作を読んだ。
映画『プリンセストヨトミ』を見てファンになった万城目学(まきめまなぶ)のファンタジー。
タイトルが上手い!
奈良の前につく枕詞「あをによし(青丹よし)」を鹿男の前につけるなんて。
こんな発想ができる小説家なんだもの、中身も面白いに違いない。
って、実際、とても面白く読んだ。

舞台はわたしの好きな奈良。
古都太宰府に住むわたしです。
大阪、京都、奈良だったら、奈良が一番好き。

お話は大学院で神経衰弱になって奈良の女子高に赴任させられた主人公が
奈良公園の鹿に話しかけられ、日本の危機を救うために奮闘するというもの。
その鹿は1800年も生きて、人間界を守っている。
赴任した初日から主人公は生徒に馬鹿にされる始末。。。
鹿は60年に1度行われる「鎮めの儀式」に使う“目”の運び番に主人公を任命する。

(以下ネタバレ注意)

鹿はなんのために1800年も命を繋いで人間界を守っているのか。
その理由に泣ける。。。
これが、この小説を青春小説にしている所以だろうか。。。
歴史は卑弥呼の時代にさかのぼる。
鹿は卑弥呼に人間界を守る役を引き渡されたのだ。
鹿は自分の姿を美しいと言ってくれた卑弥呼に恋をしたのだ。
小説の最後、もう1つの恋が主人公を救う。

その人のために何かをしたいと思うこと、
無償でそう思うこと、
いえ、自らを犠牲にしてもそう思うこと、
それが恋。。。

読み終えて爽快な気分になる空想歴史青春小説。
それが『鹿男あをによし』です(⌒-⌒)
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2011年10月25日

写真集『世界遺産・小笠原 』

奇跡のように美しい南の島に行ってました。
写真集の中で(笑)

活字の本も好きですけど、
画集や写真集もよく手にします。

写真家、三好和義が撮った小笠原は
あまりに、あまりに美しくて、泣けてきそうでした。
忙しく過ごしていた数ヶ月の疲れを癒してくれました。

小笠原の島々は家族の名前が多くつけられています。
父島、母島、兄島、妹島など。。。

小笠原には容易に行けません。
東京から丸一日以上、船に乗って行かなくてはなりません。
その船便も6日に一便だけ。
5泊6日の旅が必然です。
誰もが簡単に行けない島だからこそ、
美しい自然が守られているのです。

澄み渡った青い空。
透明な海。
巨大なマッコウ鯨のジャンプ。
隔絶した島だからこその希少な生き物や植物の数々。
アホウドリ繁殖地復元のプロジェクト。

日本が小笠原の領有を通告したのは19世紀のこと。
そして世界自然遺産に登録されたのは今年のこと。

簡単には行けない美しい島が
手の平の中で楽しめる。
これはそんなすてきな写真集。。。

世界遺産・小笠原 [単行本] / 三好和義 (著); 朝日新聞出版 (刊)
ラベル:小笠原
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2011年09月03日

『衝撃の絵師 月岡芳年』

今、本があま読めない状況ですが、
画集を一冊、手に取りました。
血みどろ絵なんてのがあるから、
おすすめするわけではありませんが、
すごい絵師です。
幕末から明治を生きた月岡芳年。
思えば、この時代は内戦の時代。。。
人々が争い、血を流した時代でした。

緻密な描写力。
物語の世界を視覚化する稀有な才能。。。
没入して見入ってしまいます。。。

この絵師に魅入られた作家は多かった。
カバーに書かれた、それらの作家の言葉がいい。

たとえば三島由紀夫。
「おのれの生理と、時代の末梢神経の昂奮との幸福な一致。。。」

桶狭間の前哨戦で討ち死にした佐久間大学、
新聞の三面記事に掲載された復縁を拒否して殺害された妻、
明治のつやっぽい女たちの風俗、
妖怪や幽霊など。。。
本の中から飛び出してきそうな躍動感が芳年の特徴。
色彩と構成力もすばらしい。。。

衝撃の絵師 月岡芳年 [単行本(ソフトカバー)] / 新人物往来社 (編集); 新人物往来社 (刊)
ラベル:月岡芳年
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2011年08月23日

こうの史代『この世界の片隅に』

風邪をひいて、4日間、ずっとベッドで過ごしました。
その間、久しぶりに漫画を読みました。
近頃はさっぱりですが、大学時代は漫研に在籍してたんです(笑)

大好きな作家、こうの史代さんの「この世界の片隅に」。

この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス) [コミック] / こうの 史代 (著); 双葉社 (刊)

この世界の片隅に(後編) (アクションコミックス) [コミック] / こうの 史代 (著); 双葉社 (刊)

『夕凪の街 桜の国』を読んで以来のファンですが、
この作家の好きな言葉が、
わたしも好きです。

「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を書きたいと思っている」(ジッド)

戦時下のお話。
おっちょこちょいの主人公、すずが呉に嫁ぎ
日常生活を送る話。
静かな反戦漫画。
おっとり優しいタッチで描かれる。

感心するのは、
作者が知らない戦時下の風物がよく描かれていること。

誰も何も悪くないのに、
大事なものが奪われていく戦争。。。
声高に反戦を叫ぶことはないのに、
身の回りのものや人を愛することを描くことで、
静かに思い至らせる。。。


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2011年06月12日

高橋栄順の本とミーナさんちのお花

忙しい1週間。
寝る前に眺めていたのがミーナさんから借りた
高橋永順の「大好きな花たちをあつめて」という花の写真集。

とても趣味が合って、大好きなお花ばかりが載っていました。
露光過多気味の花の撮り方が好き。
そして、野の花を生けるような投げ入れに近い
自然な生け方がとても好き。
花の色の選び方が好き。

ミーナさんちのお花も、
色の選び方が永順さんのお花によく似ています。

アイビーゼラニウム_1_1.jpg

アイビーゼラニウム。
垂れ下がり加減がすてき。

松虫草。

スカビオサ_1_1.jpg

ルドベキア。

ルドベキア_1.jpg

山紫陽花2_1.jpg

額紫陽花、七変化。

山紫陽花1_1.jpg
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2010年03月26日

『カラヴァッジョ』

カラヴァッジョ(1571年〜1610)という画家は
いつも気にかかります。


もっと知りたいカラヴァッジョ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいカラヴァッジョ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

  • 作者: 宮下 規久朗
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本




これは、入門書として手に取るのにちょうどいい本。

聖と俗をあわせもつ男と言ってしまえば陳腐ですが。。。

わたしは彼の描く優美な指を見るだけで感動します。
優美なものは優美な精神の持ち主にしか描けないからです。

美しい肌と筋肉。
崇高さを漂わせるキリスト。
悔悟の表情。

ミラノを訪れたとき
ミラノに2点あるカラヴァッジョの作品を見損なってしまいました。
すばらしい静物画があるアンブロジアーナ絵画館は
改装中かなにかで閉まっていて、
ブレラ美術館はラファエロの印象が強くて
カラヴァッジョも見たかもしれないけれど
記憶にないのです。
もしもローマに行く機会があったら、
そこにはカラヴァッジョの作品が一番たくさんあるので本物を見てみたいと思います。

カラヴァッジョという画家は
こんなにも崇高な絵が描けるのに
粗暴な面を持ち合わせ、
人を斬りつけ、あげくの果てに死なせていることでも有名です。

崇高な画家であると同時に粗暴な殺人者。
カラヴァッジョの中の相反する人格は
人間というものの不可解さを感じさせます。
不可解だからこそ、また興味が尽きないのです。

本を紹介しましたが、
実は今、シネリーブル博多駅で映画『カラヴァッジョ』を上映中です。

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2010年03月23日

『柳柊二 怪奇画帖』 』

今日はついに風邪をひいてしまったわたしです。。。
有田で雨に打たれたのがいけなかったかな。。。
一日で乗り越えられるかな?

今朝の通勤電車の中と会社の昼休みで読んじゃった
っていうか見ちゃった本。


柳柊二怪奇画帖

柳柊二怪奇画帖

  • 作者: 柳 柊二
  • 出版社/メーカー: ラピュータ
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本




わたしは姉妹しかいなかったので
オトコの子が読んでる漫画にはあまり縁がありませんでした。
でも、ピアノの先生の家に通っている時代、
そこにオトコの子がいて『週刊少年マガジン』が置いてあって、
待ち時間の間、一生懸命読んでました。

柳柊二の懐かしい絵は
当時『週刊少年マガジン』のグラビアなんかで見ていたような気がします。
それに文学全集やSFものなんかでも。

確かな筆力の挿絵。
豊かな想像力。
怪奇な世界、不思議な世界。

子どものころは挿絵入りの物語をむさぼるように読みました。
だからこの挿絵画家、柳柊二さんには
知らず知らずのうちに影響を受けているのだと思います。

オトナになった今も
怪奇好き、不思議好き。

この本の中の『燈台鬼』の挿絵は特に印象深い。
奈良時代、遣唐使として唐にわたった小野石根は新羅の大使の恨みを買ったことから、さらわれて消息を絶つ。
その息子の道麻呂は父を探すために自らも遣唐使となる。
やっと見つけた父は頭に何本も蝋燭を立てた人間燈台にさせられ、変わり果てていた。。。

離れ離れになった親子が再会する話は昔話に多いけど、
人間燈台とはなんという発想。。。
そして挿絵がリアルでうなされそう。。。
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2010年02月01日

「世紀末の美神たち」 高階秀爾

子どものころ、父はよく本をお土産に買ってきてくれました。
「小公子」「小公女」「ああ無情」「ヘレンケラー」…。

そして今朝、家族がかつての父のように本を買ってきてくれました。
本をもらうのは久しぶり。。。


世紀末の美神たち

世紀末の美神たち

  • 作者: 高階 秀爾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 単行本




世紀末に凝っていたのは20歳前後のこと。
この本に出てくるミューズたちも
20歳のころに出会っています。
頽廃という言葉に傾倒していた20歳のころ。
こういう青春のころに出会ったものたちに再会すると
けだるかった青春が甦ってきます。
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2009年11月12日

『絵金』と夕暮マリー

絵金。
不思議なその名前。

絵金を知ったのはいつのことだろう。
四国の街のお祭りで飾られる絵を描いた絵師の名。
幕末に活躍した絵師・絵金。

わたしは四国に行ったことがない。
四国に行くなら高知の赤岡のお祭り、絵金祭りのときに訪ねたい、
と思っているのだけど、その機会はなかなか訪れない。
赤岡では祭りの夜、
蝋燭の明かりで絵金の芝居絵を照らす。

これは年に一度の祭りの時のみ公開される絵金の絵をまとめた画集だ。

赤を多用した芝居絵。
おどろおどろした絵の数々。

そこに夕暮マリーが短歌をつけている。

そう、この画集で夕暮マリーという歌人を知った。

そして久しぶりに歌を読んでいる。
夕暮マリーのブログで。
http://yaplog.jp/yu-gure-marie/

夕暮れ好き、街灯好きというマリー。
(マリーは男性)
彷徨う魂を、歌の中に見つける。


絵金

絵金

  • 作者: 絵金蔵
  • 出版社/メーカー: パルコ
  • 発売日: 2009/07/18
  • メディア: 単行本



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2009年10月05日

ターシャ・テューダーの本

最近、本を借りているAちゃん。
今日、ご紹介するのはそのうちの一冊です。

絵本作家のターシャ・テューダーの言葉と
ターシャの家の写真を集めた本。

アメリカの田舎で一人暮らしをし、
アーリーアメリカンな服を着て、
花咲く庭をこよなく愛したターシャ。

ターシャの本はいくつか読んだけど、
今回は人形の写真がとってもいいと思いました。

ほっそりとして、知的な顔立ちの人形はマリオネットなのかな?

自分の好きなものに囲まれて生きる。
それはとてもすてきなこと。
そんな暮らしを眺められるのがこの本です。


生きていることを楽しんで (ターシャ・テューダーの言葉 (特別編))

生きていることを楽しんで (ターシャ・テューダーの言葉 (特別編))

  • 作者: ターシャ テューダー
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本



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2009年08月16日

井上荒野の「切羽へ」

お盆の前に「読んでほしい」と言って差し出された一冊の小説。
それは井上荒野の「切羽へ」という本だった。

お盆の三日間の眠る前の時間で読み終えた。
義務で読んだわけではなくて、
井上荒野の筆力に惹きつけられて読み進んだ。
かつて炭鉱で栄えた島で暮らすセイという30代の女性の
揺れる心情が絹のようにきめ細かく描かれていて、
のめり込んだ。

*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*^*:._.:*


島の医者の娘で養護教諭のセイは父が残した丘の上の家で、
画家の夫に愛され幸せに暮らしている。
同僚の月江は東京から会いにやってくる男の愛人で
性の匂いを発散させながら奔放に生きている。
穏かなセイの暮らしは新しく赴任してきた石和(いさわ)という音楽教師の出現でバランスを崩す。
セイは彼が気にかかるということを意識していないが、
どうしようもない揺らぎがセイの中に生まれる。

月江の方は東京の男の妻が現われ修羅場となる。
だが、セイの方には何も起こらない。
夫は変わりなくセイを愛するが、
ただセイの心の中には異質なものへの衝動が巣くう。
セイは無意識のうちに、自分の中に住む悪魔を感じている。
だから夫からどんなに愛されようと完璧に満たされることはないのだ。
穏かなセイは月江のように行動しない。
その行動しない心のひだを描くことがこの作品の主題だ。

切羽、それは普通「せっぱ」と読むが、作者は「きりは」と読ます。
切羽とはトンネルのいちばん先、それ以上は進めない場所のことだ。
わたしも「せっぱ」より「きりは」という読み方が好きだ。
羽を切られたセイ。

セイは切羽に留まる。
月江はトンネルの向こうに突き抜ける人だ。
セイは今いる島という切羽に留まりながらも、
夫以外の異人へ惹かれるがゆえに、
どこか欲望が満たされない切なさを生きる。
セイという名は性に通じているのではないだろうか。
これはかなりセクシュアルな小説だ。
何も性をあからさまに描かなくても
作者の筆力が切羽の性を描き切る。

物語の最期、
トンネルを突き抜けなかったセイは夫の子どもを宿す。
切羽には切なさが内在するが、
そこには幸福も確かに存在するのだ。



切羽へ

切羽へ

  • 作者: 井上 荒野
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本




(平成20年第139回直木賞受賞作)
ラベル:井上荒野 切羽へ
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2009年05月06日

『禁じられた青春』上中下…沼正三 

本との出合いはさまざま。
この本との出合いは表紙の絵を描いた異端の画家、山本じんの
昨年福岡市で開催された個展がきっかけでした。
背中の皮膚を破って植物が生えた少年の背中…。
いかにも沼正三の作品に似合っています。

作者の沼正三(昨年死去)は、
あの名高い異端の小説『家畜人ヤプー』を書いたといわれる謎の多い人物。
その人の自伝です。

なぜこの本を読む気になったのか。
それは彼が大正15年という年に福岡に生まれ、
昭和の歴史そのものを生きた人だから。
沼の醒めた視線でとらえられた
戦前の福岡、戦中の満州、戦後の福岡の真実に
触れたいと思ったからでした。
それはわたしにとって知るべき真実でした。

戦前の沼の一家は父親の事業の失敗で困窮生活を強いられ、
福岡市内を転々と移り住みます。
昭和14年には福岡商業高校に進学。
ゲートルを足に巻いての通学が始まります。
ゆがんでいく時局に流されながらも、
文学少年で活動写真好きだった沼少年。
高校を卒業すると満州特殊鉄鋼株式会社に就職し、日本を離れます。
満州で見た日本人の現地の人々に対するすさまじい蔑視。
入隊するために満州から戻ると、
兵隊としての訓練が待ち受けます。
そのころ福岡の街は空襲され、
今の博多リバレインの場所にあった、
十五ビルの惨状もこれまで聞いたこともない悲惨さで語られます。
戦後、山崎内相は全国地方長官へ指令し、
占領軍兵士のために慰安施設の設置を指示します。
生活の手段のない戦争未亡人などがそこで働いたといいます。
そして孤児たちも不幸極まりない境遇にありました。
生きるために万引きなどをしてつかまり、収容された施設は地獄。
施設から学校へ通っても、
白い目で見るのは父兄や教師だったというのです。
貧しい若者たちが戦死し、
たとえ生き残っても弱者には悲惨な状況が待ち受けていました。
戦後、60年以上経っても
弱者は今もって弱者です。

作者が異端の作家なだけに
インモラルな面が取り上げられがちな自伝ですが、
ここには一つの正直な
それゆえ真実にあふれた昭和の歴史が描かれています。

かわいい『禁じられた青春』は 幻冬舎から文庫で出ています。上中下の全3巻。
  ↓
 ★『禁じられた青春』…沼正三


posted by 理乃 at 13:00| Comment(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月08日

画集のような絵本「終わらない夜」

今日も暑さが痛いくらいでした。
がんがん暑い外から帰ってから、
クーラーを効かせた部屋で
絵本を一冊読めると幸せです。

これはカナダの画家ロブ・ゴンサルヴェスの絵に
セーラ・L・トムソンが詩を添えたもの。

終わらない夜終わらない夜
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 終わらない夜
[著者] セーラ・L. トムソンロブ ゴンサルヴェス
[種類] 大型本
[発売日] 2005-08
[出版社] ほるぷ出版..
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とても絵がきれいでユニークです。
シュールレアリズムですね。
風景が変容するのです。
表紙は夜の川。
針葉樹が川面に映っています。
その逆さまの針葉樹の樹と樹の隙間が少しずつ女性に変化し、
彼女はやがてランプを持って陸へと上がってきます。

ロブは風景を見ていると、
別のものを連想するシュールレアリストなのです。

ページをめくるたびに、
ロブのシュールな世界が広がります。

緑のキルトのベッドカバーは田園に…。
向日葵は黄金の髪を持つ女性に…。
床板はいつしか森林へ…。

カナダの自然、
それも多くは夜が描かれているので、
涼しい気持ちになれる絵本です。
ラベル:絵本
posted by 理乃 at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする