2007年08月02日

「粘菌」その不思議な世界

暑い夏は読書にもってこい。
暑くて昼間はあんまり外に出たくないからです。
大作とかは夏休みに読破することが多いものですよね。

粘菌―驚くべき生命力の謎粘菌―驚くべき生命力の謎
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 粘菌―驚くべき生命力の謎
[著者] 松本 淳
[種類] 大型本
[発売日] 2007-04
[出版社] 誠文堂新光社

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これは粘菌の写真が満載の本。
読書というより、眺めて楽しむ本です。

粘菌ってなに?
そう思うかもしれません。
まったく興味ない人も多いかも…。

粘菌は「変形体」と「子実体」という二つの形態があります。
「変形体」は微生物などを摂食するするために移動するという動物的な面をもっています。
「子実体」は繁殖期に形成され胞子を飛ばすという植物的な面をもっています。
この二つの面を合わせもつ不思議な生物が粘菌。
動き回れる植物??
胞子を飛ばす動物??
粘菌は森の中の倒木などで見ることができます。

子実体の形は宇宙から飛来してきたかのような特異な形。
小さな押しピンみたいだったり、
マッチ棒の先みたいだったり。
色彩も黄色あり、赤あり、瑠璃色ありと多彩。
その不思議きわまりない造形に魅かれます。
変形体は大きくなると巨大アメーバのようで異様です。

1973年のこと、北米で粘菌が大発生しました。
庭に現れたのは黄色いネバネバの奇妙な物体。
「ほかの天体から人類を滅ぼすために送りこまれた」なんていう噂も流れ、
市民はパニックになったそうです。

粘菌はヒトよりも昔から地上にいて、
生態系を支えてきたんですけどね。

こんな不思議な生き物がいるということ自体が
感動で面白くてしかたありません。

粘菌を愛した風変わりな学者に南方熊楠(みなかた くまぐす)がいます。
奇行で有名な彼の自伝を水木しげるが漫画(「猫楠」)にしていますが、こちらも傑作。

猫楠―南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)猫楠―南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 猫楠―南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)
[著者] 水木 しげる
[種類] 文庫
[発売日] 1996-10
[出版社] 角川書店

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粘菌と南方熊楠に興味を持っている方にはオススメです。




ラベル:粘菌 南方熊楠
posted by 理乃 at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月30日

小野不由美の十二国記シリーズ「東の海神 西の滄海」

マイブームの小野不由美。
ついに、ついに十二国記に手を出してしまいました。
いったい、どこまで読み進んでしまうのでしょうか…。

東の海神 西の滄海―十二国記東の海神 西の滄海―十二国記
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 東の海神 西の滄海―十二国記
[著者] 小野 不由美
[種類] 文庫
[発売日] 2000-07
[出版社] 講談社

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十二国記はシリーズで出ていて、
どこから読もうかなと思ったのですが、
年代順に読んでいくことにしました。
まずはじめはこれ。
「東の海神(わだつみ) 西の滄海」。

小野不由美の作り出す世界は独特で、
いつも感心します。

十二国記は今わたしたちが暮らしている世界とは
別世界の話です。
そこは古代の中国にイメージを取っていて、
登場人物の名前も中国的。
聞きなれない役職も含め、一人の人物がいろんな呼ばれ方をして、
いつもながらこの人の小説の人物は把握するのに苦労します。

そこは黄海を取り巻く海と、
その周りに十二の国が整然と配置された世界。
十二の国にはそれぞれ麒麟により選ばれた王がいます。
「東の海神 西の滄海」はその中の一つ「雁(えん)」という国に興った謀反の話。
別世界といっても、ときおり何かの間違いでこちらの世界と交わることもあり、
雁国の麒麟、六太(ろくた)はこちらの世界で生まれ、
悲惨な少年期を過ごします。
王もまたこちらの世界で生きていた人間です。

雁の王に迎えられた尚隆(しょうりゅう)は、
一見政治に不真面目に見えて、会議にも欠席する始末。
なんだこの王。ふざけた奴。と、最初は思ってしまいます。
ところが豪快で自由なこの王は、やはり麒麟が選んだ王。
謀反を見事に解決するのです。

十二国の世界には空を自在に飛翔する妖魔がいます。
赤い体の巨大な狼で、青い翼に黄色い尾、
黒い嘴を持つ伝説の中の獣のよう。
これが残酷で人を喰ったりするのです。
さすが小野不由美の世界。
おだやかではありません。
この小説、最初はジュニア用として世に出てアニメにもなってるんですが…。(アニメは見てません)

わたしは小野不由美がつくり出した麒麟という生き物が好きです。
麒麟は慈悲の生き物。
殺戮を見ると気分が悪くなって倒れてしまいます。
物語の最後、麒麟の六太は国づくりに勤しむ尚隆に「自分のための場所がほしい」と言います。
「どんな場所?」と問われて六太はこう答えます。
「誰もが飢えないですむ豊かな国。凍えることも夜露に濡れることもない家。民の誰もが安穏として、飢える心配も戦火に追われる心配もない、安らかな土地がほしい」。
それを約束する尚隆に理想の政治家の姿を見るのです。
尚隆、かっこいい…。

posted by 理乃 at 09:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

ミステリーはいかが?…小野不由美の「黒詞の島」

マイブーム小野不由美の『黒祠の島(こくしのしま)』のご紹介です。
2006年の作品です。
        ↓
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=10GDGT+53DJ3M+5WS+C28PV&a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F4437618%2F

黒祠とは…。
明治政府が行った祭政一致政策により全国の神社は社格制度のもとに統合され、国家の施設とされた。
この統合に与しないものは迷信として弾圧された。
「黒祠」とは統合されなかった神社。いわゆる邪教。

舞台は九州北西部にある夜叉島。
夜叉島には神霊神社という神社があり、宮司は神領家の分家が務める。
主神は「カンチ」。
祀られている神像は馬頭夜叉。
昔、村人を喰らっていた鬼を旅の行者が鎮め、祀ったのが起源という。
その馬頭夜叉を鎮める守護は神領家の三男もしくは長女。
守護は蔵座敷に幽閉され外出もできない。

調査事務所を営む式部剛は、仕事を依頼されていた仲の作家、葛木志保が行方不明になったため、葛木の故郷の夜叉島を訪れる。
ところが閉鎖的な村人の口は固く、葛木の行方は一向に知れない。
その後、村の医師、泰田の協力を得、葛木が死んだと知らされる。
葛木は殺されたというのに真相を隠そうとする島の人々。
島を牛耳る神領家にはなにやら曰くが…。

この人の小説はいつも登場人物が多い。
こんなに多くの人々をよくぞ描き分けると感心する。

また邪教を題材に選ぶなど、ミステリー作家として独得のセンスを持っていると思う。
好き嫌いはあると思うけど、ハマる人も多いでしょう。

◎本日の読売新聞にホラーとして小野不由美の「屍鬼」がちょっとだけ紹介されてました。(写真入り。p11)

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2007年07月19日

小野不由美の「魔性の子」

マイブームの小野不由美。
ついに十二国記シリーズのサイドストーリー、
「魔性の子」を読みました。
ファンタジー・ホラー小説です。

魔性の子魔性の子
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 魔性の子
[著者] 小野 不由美山田 章博
[種類] 文庫
[発売日] 1991-09
[出版社] 新潮社

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現代の高校生活の話なので
どのへんで十二国記とつながるのか、
まったく最初は分かりません。
エルザもこの本が十二国記シリーズとは気付かず読み進んでいました。

小さなころ神隠しにあった高里要は周囲から孤立する少年。
ある日教育実習生として母校に戻ってきた広瀬は、
高里に興味を抱く。

高里はこの世界に違和感を持ち、
かつて神隠しにあったときに訪れた異世界に焦がれる。
広瀬も幼いころ別世界を覗いたがことがあり、
高里が理解できる。
高里をいじめた生徒はなぜか不慮の事故に見舞われる。
それで「高里は祟る」と恐れられることになる。
高里自身は何の危害も加えていないのに。
そんな彼を、広瀬はかばおうとするのだが、
報復は思いもかけない大惨事へと拡大していくのだ。

小野の作品によく登場する世界と違和感を持つ少年。
高里もまたそんな一人。
どこか超然とした彼のたたずまいがいい。
ラベル:小野不由美
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2007年06月10日

小野不由美の「東亰異聞」

小学生のころ、
学校の図書館で江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを
わくわくしながら読みました。
そんなわくわく感に近い読書の楽しみを味わわせてくれたのが
小野不由美の「東亰(とうけい)異聞」。
  ↓
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=10GDGT+53DJ3M+5WS+C28PV&a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F1057537%2F

彼女の「屍鬼」を読んで、
扉に書かれていた「To’Salem’s Lot(セイラムズロット)」が
スティーブン・キングの「呪われた町(’Salem’s Lot)」の原題で、
それにインスピレーションを受けて書かれた物語であったと知り、
早速「呪われた町」も読んでみましたが、
「屍鬼」はこの原作を超えたと、
再び小野不由美に戻りました。

時代は明治。
でも舞台は東京でなくて埋立て地の東亰。
これはパラレルワールドなのです。

人を高所から突き落とし、全身火だるまになって姿を消す火炎魔人。
夜道で鋭利な鉤爪を使って人を斬る赤姫姿の闇御前。
はたまた人魂売りやら首遣いだのが跋扈する東亰。
新聞記者の平河は火炎魔人と闇御前が起こす殺人事件を追ううちに、
その原因が元摂関家の鷹司(たかつかさ)家の跡継問題に端を発しているのではと推理します。

東亰に魑魅魍魎が跋扈し出したのは法力によってそれを制していた天皇の病気のためという設定。
摂関家の跡継ぎという運命に翻弄される兄弟と、それを取り巻く人々。
鷹司家の長男、直煕(なおひろ)が一番気になる登場人物です。
跡継ぎになることなど眼目にない人物で、
自由民権運動に足を突っ込みながら、
対外進出を図る民権論者たちに愛想をつかし、
平等などない世の中に絶望する直煕。

やがて魑魅魍魎によって操られた人々は哀しい運命を辿っていくのです…。

雨降りの日にはこんな伝奇物でも読んでみませんか?
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2007年05月24日

小野不由美の「屍鬼」

冬の間は風邪をひかなかったのに、
ここ数日風邪でダウンしてました。
風邪引きの前に買い込んで読み出した本を
正に憑かれたように読みふけりました。
風邪でも引かないと一日読書なんて贅沢できないから、絶好のチャンス?
でもあまりに熱中して、それで風邪が長引いたかも…。
最後は読み過ぎて頭痛。
最初は読破できるの?と思ってました。
だって全5巻なんです。文庫版ですけど。
ところがところが、正にジェットコースターノベル。
読み出したら止まりません。
しばらく舞台の村に行ってました。

それがこの本。
「屍鬼(しき)」。
小野不由美の本です。ホラーです。
コワイタイトルですね。
そうコワイです。でも哀しい。

屍鬼〈1〉屍鬼〈1〉
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 屍鬼〈1〉
[著者] 小野 不由美
[種類] 文庫
[発売日] 2002-01
[出版社] 新潮社

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平穏な、でも都会から越してきた夏野のような少年にとっては
抜け出したくてたまらない鄙びた村、外場村。
昔ながらのしきたりが生きるこの村に、
突然どこからか洋館が移築されます。
それから村では人々が原因不明の病で亡くなっていきます。
村を背負う若き僧侶・静信と医師・敏夫は病の原因を突き止めようと寝る間も惜しんで奔走します。

洋館に現れたのは美しく意味あり気な家族。
なかでも沙子(すなこ)は13歳にもかかわらず大人びた少女で、静信を翻弄します。

1巻では村の日常が描かれます。
登場人物の数がとても多くて混乱しそう。
でもあとで重要な役割を持って再登場するのでしっかり頭に入れながら読まなくてはなりません。
村の濃密な家族関係に鬱積している人、
村の生活に憧れて都会から移り住んで来た家族。
やぼったい田舎が嫌いで都会に出ていきたくてしょうがない少女。
とても緻密に村の人間一人ひとりが描かれているために、
このとんでもない展開をしていく小説にリアリティがあるのです。
外場村そのものの歴史、地理…、外場村は本当にある村のように驚くほど丹念に描かれています。

ラスト正義を行使するための暴力はあまりにむごい…。
もちろん悪がふるう暴力はそれ以上にむごいのですが。
暴力をふるわないために正義を行使しないのが善なのか、
正義はどうあっても行使すべきもの、それが善なのか…。
矛盾をつきつけられます。
感心するしかない労作。
読後、はかなさを感じてぼうっとなります。

特に夏野。
ちょっと生意気で、反抗的で鬱屈した青春の真っただ中にいたのに、すべて失われてしまって、哀れでなりません。
村を嫌って勉強して出て行こうとしたのに、
いつの間にか村の友人を救おうとするほどになっていた健気な少年…。心に残る少年です。





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2007年05月06日

井上靖の「額田女王」

古都太宰府を歩くと歴史を知りたくなります。
古代の山城、大野城や水城、大宰府政庁の創建当時の様子ってどんなだったのだろうって。
白村江(はくすきのえ)の敗戦のあと唐の侵攻を恐れて築いた水城。
白村江の戦いって歴史では習ったものの、
どんな戦いだったのかちっともイメージが涌きません。
たとえ玄界灘を渡っても生きて帰って来れれば運がよかったあの時代、
大船団を仕立ててどのように船出していったのでしょう。

何か白村江の戦の時代を描いた小説がないかなと探してみて出合ったのが井上靖の「額田女王(ぬかたのおおきみ)」でした。
額田女王ってあの万葉の歌人です。

額田女王額田女王
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 額田女王
[著者] 井上 靖
[種類] 文庫
[発売日] 1972-10
[出版社] 新潮社

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小説のヒロインは額田女王。
そしてヒーローは中大兄皇子と大海人皇子。
大化の改新、遷都、白村江の戦いと激動の時代のお話です。
百済からの使者より新羅が百済を滅ぼしたことを知ると中大兄皇子は兵を送ることを決断します。
倭・百済の連合軍と唐・新羅連合軍との戦いは当然のごとく大敗。

激しい政務の中、中大兄皇子と大海人皇子の二人ともが思いを寄せていた女性が巫女である額田女王。
しかし額田は巫女としての特殊な立場もあり、大勢の妃の中の一人になることはよしとせず、どちらの妃となることも拒否します。
優れた歌人であったことからも分かるように、
自己主張ができた自立した女性だったのだと思われます。
その辺が二人の皇子の心を捕らえたのかも。
何分宮廷に仕える巫女という身分ですので、
本当の自立はありえないのですが…。

白村江の戦いに負けた中大兄皇子は遷都したり、水城をつくったりして国を守ろうと大変な政務に明け暮れ、途中で病のために亡くなります。
中大兄皇子の後を継いだ大友皇子に対して大海人皇子が壬申の乱を起こしたところで物語は終わります。

読後、飛鳥時代のイメージはずいぶんふくらみました。
読み始めた動機は「水城はどんなふうに築かれたのか知りたい」ということで、その記述を期待していたのですが、
実際にあった記述は「水城を築いた。何町にも及ぶ堤をつくって濠に水を入れた」といったくらいでちょっと残念。
でも飛鳥時代に触れたい方にはおすすめの一冊です。


ラベル:井上靖 額田女王
posted by 理乃 at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月19日

『奇想の系譜』

九州国立博物館で若冲を見たとき、
ミュージアムショップに置かれていたので買ったのがこの本。
この展覧会を見て、江戸の絵師たちがちょっとしたマイブームになりました。
若冲もすごいけど、江戸にはまだまだすごい絵師たちがいたことを教えてくれる本です。

奇想の系譜奇想の系譜
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] 奇想の系譜
[著者] 辻 惟雄
[種類] 文庫
[発売日] 2004-09-09
[出版社] 筑摩書房

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この本の一番初めに出てくる岩佐又兵衛は強烈です。
なに〜この絵は、って感じで。
これは江戸のスプラッタームービーです。
それはもうすさまじい絵でここには書けません。
これほど混沌とした生々しい絵が描けたのは、
彼自身織田信長に惨殺された一族の生き残りだったからなのでしょう。
平和な江戸ではなく、
まだ戦国時代の記憶が鮮明に残る初期の江戸を感じます。

続いて紹介されている若冲を含む五人の絵師たちもすごくて、すごくて。
とにかく中身の濃い名著です。

ラベル:若冲 岩佐又兵衛
posted by 理乃 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月26日

ターシャ・テューダーの「ターシャの家」

ずいぶん前、
まだ今のようにターシャ・テューダー(絵本作家)のブームが来る前に下関の児童書専門店を訪れたことがあり、
そのとき紹介されたのがターシャ・テューダーの庭の本でした。

美しく咲き乱れる庭の花々。
昔ながらの暮らしと、衣装。
人工物に囲まれたアメリカではない、
アーリーアメリカンの時代のままの素朴で自然を愛する暮らしを
しているターシャというすてきなおばあさまを知ったのでした。

美しく歳をとることをまさに体現しているその姿。

花々は自然に咲きみだれているように見えながら、
ターシャの好きな花だけを
美しく見えるようにとても効果的に配置して植えて育てているガーデナーとしての素晴らしさ。

この本はターシャの家にスポットを当てていて、
これもまたすてきです。

ターシャの家ターシャの家
販売元 : Amazon.co.jp 本
価格 :
[タイトル] ターシャの家
[著者] ターシャ・テューダー
[種類] 大型本
[発売日] 2005-11-04
[出版社] メディアファクトリー

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春の日の陽だまりの中で、
美味しい紅茶でも飲みながら楽しみたい本。

そうターシャの庭は訪れるものではありません。
大勢で押しかけて庭を荒らしたり、ターシャの生活を煩わすことなどとんでもない。
遠くから楽園を思って、本を眺めていることが
一番いいことなのでしょう。


posted by 理乃 at 11:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月10日

田辺聖子の『今昔物語』

前回の「純情きらり」に続いて見ているNHKの朝の連続テレビ小説「芋たこなんきん」。
藤山直美と國村隼の息の合った演技がすばらしい。
このドラマの中の藤原直美はかわいいです。
田辺聖子の自伝的ドラマということで、
これまで一度も読んだことがなかった田辺聖子の小説を読んでみようと書店へ行きました。
そこで選んでみたのが『田辺聖子の今昔物語』

●『田辺聖子の今昔物語』
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=10GDGT+53DJ3M+5WS+C28PV&a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F630674%2F

『今昔物語』の中から田辺聖子が選んで現代語に置き換えた29話を収録。
おかげで12世紀ごろに書かれたらしい『今昔物語』に浸りました。
『今昔物語』は全31巻あります(8巻18巻21巻は失われているということ)。
インド、中国、日本(本朝)の三部に分かれている短編集です。
この本は田辺聖子が愛する本朝世俗編から選ばれています。
中には中世のさまざまな階層の人々が登場しますが、実に生命力にあふれているのです。

『鬼とお后』は物怪のために生気をなくした帝の后の加持祈祷に呼ばれた上人が、その美しい后に恋をします。

清浄な修行に勤しんでいた上人の心は煩悩に苦しみ、
ついに后の御帳台の内に押し入ってしまいます。
たちまち捕らえられ牢屋に入れられますが、
「死んで鬼になって思いを遂げる」と恐ろしいことを言うものだから、后の父親の大臣が怯え、帝に願って上人を牢から出して修行していた山に返します。
しかし上人は恋しさあまって食を断ち、死んで本当に鬼となり、激しい嵐の日に現れます。

見上げるばかりに大きく、漆のように黒い肌、頭はざんばら髪で角が生え、牙があり、赤い褌に槌を腰に差したその姿。

「恋慕に肝魂が砕け、火のように胸が焦がれて鬼になったのじゃ」という上人。
周りの者はあまりの恐ろしさに腰が抜けますが、
何としたことかお后はにっこりして御帳台の内に鬼と共に入ります。

「一目で恋に落ちてしまって、どんなにお慕いしていたことか」と語る鬼。
「いつかはあなたのような方が現れると待っていたの。
なんて美しい姿なの」と答える后。
鬼が去ったあと后はぼうっとします。

それから毎日のように逢瀬を重ねる二人。
怖れを抱いた帝たちは僧たちに祈祷をさせ鬼を祓います。
平常心に戻った后に帝は「よかったよかった。御帳台の内は誰も見ていたわけじゃない。誰にも知られないよう口をつぐんで隠していればいい」(寛容な帝ですね)と言います。

と、そこへ再び現れ「隠し事ではないぞよ」と踊り上がる鬼。
哄笑して鬼と抱擁する后。
帝も大臣も女房たちも、かぐや姫を迎えにきた天人の軍勢に目がくらんだように身動きできず、ただ二人の様子を見つめます。

語り手の女房は「なんてみだらな」と驚きつつ、「なんて楽しそう」、ついには「なんて美しい」と心を変化させます。

思いを遂げた鬼はその後現れず、后は再び物怪に取り憑かれたということです。

こんな妖しい中世のお話が入ってます。
鬼や物怪が闊歩する想像力に満ちた平安時代って面白くて、興味がつきません。
posted by 理乃 at 12:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ★図書室 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする